2026年10月23日、イタリア・ピエモンテ州のグリンツァーネ・カヴール城(Castello di Grinzane Cavour)で、第6回「Barolo en Primeur(バローロ・アン・プリムール)」が開催されました。
今回のチャリティーオークションでは、総落札額114万500ユーロを記録し、過去最高額を更新。 なかでも注目を集めたのは、500リットルの大樽(トノー)が37万ユーロで落札されたことです。
驚くのは、これがまだ完成していないワインだということ。
なぜ、まだ飲むことのできないバローロに、これほどの金額がつくのでしょうか。
Barolo en Primeurとは?
「En Primeur(アン・プリムール)」とは、フランス語で、ワインが瓶詰めされて市場に出る前の段階で購入する仕組みを指します。
特にフランスのボルドー地方で知られる販売方式で、購入者は将来完成するワインを先に購入し、熟成を終えた後に受け取ります。
ただし、今回のBarolo en Primeurは、一般的な先物販売とは少し異なります。
目的はチャリティーです。
このオークションは、Fondazione CRC、Fondazione CRC Donare ETS、そしてバローロやバルバレスコなどの原産地呼称を管理する保護協会(Consorzio di Tutela Barolo Barbaresco Alba Langhe e Dogliani)の協力によって開催されています。
2021年に始まったこの取り組みは、今回で6回目。
オークションの収益は、医療、福祉、教育、文化活動など、さまざまな社会貢献プロジェクトに充てられます。
オークションの主役は「Vigna Gustava」
今回の中心となったのは、グリンツァーネ・カヴール城の麓(ふもと)に広がる歴史的なブドウ畑「Vigna Gustava(ヴィーニャ・グスターヴァ)」で造られた2025年産バローロです。
この畑では、イタリア統一に重要な役割を果たしたカミッロ・ベンソ・ディ・カヴール伯爵の時代にもブドウが栽培されていました。
現在、畑の栽培管理にはアルバの醸造学校が携わり、醸造には著名なエノロゴ、ドナート・ラナーティ(Donato Lanati)が関わっています。
2025年産のワインは、畑の日照条件、標高、ブドウ樹の樹齢などに応じて区画ごとに分けられ、それぞれ別々に醸造されました。
今回のオークションには、このワインが入った14樽のバリックが出品されています。
1樽からは、最終的に約270本のバローロが造られる予定です。
バローロDOCGは、収穫年の11月1日から最低38か月の熟成が必要で、そのうち18か月以上は木樽で熟成させなければなりません。
そのため、今回落札された2025年産バローロが購入者の手元に届くのは、2029年の予定です。
500リットルのバローロが37万ユーロで落札
2026年のオークションは、グリンツァーネ・カヴール城を会場に、ロンドンとニューヨークをオンラインで結んで開催されました。
競売を担当したのは、クリスティーズ・イタリアのディレクター、クリスティアーノ・デ・ロレンツォ(Cristiano De Lorenzo)です。
今回競売にかけられたのは合計22ロット。
落札総額は114万500ユーロに達し、過去最高額を更新しました。
特に注目されたのが、500リットルのトノー(tonneau)で、落札価格は37万ユーロ。
これは通常のワイン販売価格ではなく、慈善活動への寄付を目的としたオークションでの落札額です。
今回集められた資金は、各ロットに関連づけられた社会貢献プロジェクトなどに充てられます。
2026年は希少な古酒も登場
今回のオークションでは、初めて過去のヴィンテージのバローロも出品されました。
1996年までさかのぼる31本の希少な古酒が登場。
そのなかには、バローロを代表するMGA(追加地理的表示)の一つであるカンヌビ(Cannubi)の2009年、2010年、2011年を比較できるセットや、ブッシア(Bussia)の2012年産5リットルボトルなども含まれていました。
これらの古酒は、39のワイナリーが寄贈したバローロとバルバレスコで構成される、7つの地域別ロットの一部として出品されました。
まだ完成していない2025年産のバローロと、長い熟成を経た過去のヴィンテージ。
今回のオークションでは、異なる熟成段階のワインが同じ会場に並びました。
ワインとアートのコラボレーション
Barolo en Primeurでは、ワインとアートのつながりも大切にされています。
毎年、国際的なアーティストがワインのラベルを手がけており、2026年はベネズエラ出身のアーティスト、ソル・カレロ(Sol Calero)が担当しました。
作品のタイトルは「Paisaje de vino」。
ランゲの夜の風景を、緑、青、紫などの色彩で表現した作品です。
この作品を使用した特別なラベルは、熟成を終えた2025年産バローロのボトルに使用され、2029年に購入者へ引き渡される予定です。
オークションの収益はどこへ?
今回の収益は、医療研究、教育、障がいのある人々への支援、文化活動など、さまざまなプロジェクトに役立てられます。
2026年には、ブドウ畑で働く季節労働者の生活環境改善にも注目が集まりました。
具体的には、ワイン産業における職業訓練や社会参加を支援する「Accademia della Vigna」、そして住居を確保できない季節労働者などを対象とした、一時的な夜間宿泊施設の整備が支援対象に含まれています。
また、地域別ロットの収益は、アルバの醸造学校の教育設備や教育環境の充実などにも役立てられる予定です。
オークションはまだ終わっていない
実は、2026年のBarolo en Primeurには、もう一つの予定が残っています。
11月8日にグリンツァーネ・カヴール城で開催される「アルバ白トリュフ世界オークション(Asta Mondiale del Tartufo Bianco d’Alba)」で、15樽目のバローロが競売にかけられる予定です。
このオークションは香港とも中継を結び、落札による収益は香港の支援団体Mother’s Choiceに寄付される予定です。
2026年のBarolo en Primeurは、10月23日に過去最高額を記録しましたが、チャリティーの取り組みは11月にも続きます。
まだ完成していないワインを購入し、その完成を数年間待つ。
そして、その購入が社会貢献にもつながる。
Barolo en Primeurは、バローロというワインを通じて、産地と世界を結ぶチャリティーイベントとなっています。
バローロのブドウ品種や産地、熟成規定については、 バローロ(Barolo DOCG)の基本解説 で詳しく紹介しています。
