Vigna(ヴィーニャ)とは?
イタリア語の「Vigna(ヴィーニャ)」は、ブドウ畑を意味する言葉です。イタリアでは日常的にも使われており、ワイン造りに使われるブドウが栽培されている畑を指します。
しかし、イタリアワインのラベルに「Vigna」という言葉を特定の畑名とともに表示する場合には、単にブドウ畑の名前を紹介しているわけではありません。
イタリアでは、原産地呼称ワイン(DOC・DOCG)に「Vigna」とその畑名を表示するための条件が法律で定められています。つまり、生産者が自由に好きな畑名を付けられるわけではなく、一定の条件を満たす必要があります。
また、Vignaはワインの品質を格付けする等級ではありません。特定のブドウ畑に由来するワインであることを示す表示であり、その畑の名前を使うための制度です。
では、こうした畑名の表示は、イタリアでどのように発展し、現在の制度へとつながってきたのでしょうか。
イタリアにおけるVigna表示の歴史
イタリアでは、現在のVigna表示制度が整備される以前から、ブドウ畑の名前を使ってワインの産地や由来を伝えてきました。
同じ原産地呼称のワインでも、ブドウが栽培される場所によって土壌や気候などの条件は異なります。特定の畑の名前を示すことは、ワインがどこで生まれたのかを、より具体的に伝える方法のひとつでした。
こうした畑名の表示は、1992年の法律第164号(Legge n. 164/1992)で規定され、その後、2010年の法令第61号(Decreto Legislativo n. 61/2010)によって制度が整理されました。
現在は、2016年の法律第238号(Legge n. 238/2016)第31条第10項に、Vigna表示の基本的な条件が定められています。
このように、イタリアでは畑名の表示が法律によって整備され、現在のVigna制度へと受け継がれてきました。
Vignaをラベルに表示するための法律と条件
イタリアでは、原産地呼称ワイン(DOC・DOCG)のラベルに「Vigna」と特定の畑名を表示するための条件が法律で定められています。
その基本となるのが、2016年の法律第238号(Legge n. 238/2016)第31条第10項です。この法律では、Vignaまたはその同義語に、地名(toponimo)や伝統的名称(nome tradizionale)を続けて表示するための条件が規定されています。
Vigna表示に必要な主な条件
Vignaを表示するためには、その名称に対応するブドウ栽培区画から収穫されたブドウを使用し、毎年の生産申告で明示する必要があります。
さらに、そのブドウは他のブドウとは分けて醸造すること(vinificazione separata)が求められます。
また、Vignaの名称は州ごとの公的な登録名簿で管理されます。例えばピエモンテ州では、登録された名称を公式に公開しています。
こうした条件に加えて、それぞれのDOC・DOCGの生産規定(disciplinare di produzione)にも従わなければなりません。
Vignaの登録は何を意味するのか?
Vignaの登録は、特定のブドウ栽培区画とその名称を結びつけるための仕組みです。
その名称には、公的な地図などで確認できる地名(toponimo)や、特定の場所で伝統的に使用されてきた名称(nome tradizionale)があります。
重要なのは、Vignaの登録がワインの品質を格付けするものではないということです。また、登録そのものが土地の所有権を証明するわけでもありません。
このようにVignaは、特定の畑に由来するワインであることを、法律で定められた条件に基づいて示すための表示なのです。
ワインラベルにVignaはどのように表示されるのか?
イタリアワインのラベルでは、「Vigna」という言葉に続けて、特定のブドウ畑の名称が表示されることがあります。
この表示によって、ワインの原産地呼称だけでなく、使用されたブドウがどの畑に由来するのかを、より具体的に知ることができます。
ただし、イタリアワインのラベルに書かれている地名や畑の名前が、すべて正式なVigna表示というわけではありません。
ワインによっては、特定の産地を示す地理的名称や、生産者が付けたワイン名なども表示されています。そのため、ラベルに書かれた名称が何を意味するのかを区別することが大切です。
特にバローロやバルバレスコでは、Vignaとは別に「MGA(Menzione Geografica Aggiuntiva)」という追加地理名称の制度があります。
では、MGAとVignaは何が違うのでしょうか。実際のワインラベルを見ながら、その違いを確認していきましょう。
バローロのMGAとVignaの違い
バローロやバルバレスコでは、Vignaとは別に「MGA(Menzione Geografica Aggiuntiva/追加地理名称)」という制度が使われています。
MGAは、原産地呼称の生産区域内にある、地理的に区分された場所の名称です。バローロでは170の個別MGAと11のコムーネ名によるMGAが認められています。
一方、Vignaは特定のブドウ畑の名称を示す表示です。MGAとVignaは異なる制度ですが、条件を満たせば同じラベルに両方を表示できます。
実際のワインラベルで、その違いを見てみましょう。
Prunotto Barolo Bussia|MGAの表示例
プルノット(Prunotto)のバローロ・ブッシアです。ラベルに記載された「Bussia(ブッシア)」は、バローロDOCGのMGAの名称で、ブドウの由来する地理的区域を示しています。
Prunotto Barolo Riserva Bussia Vigna Colonnello|MGAとVignaの併記例
こちらもプルノットのワインですが、先ほどとは異なる銘柄です。ラベルにはMGAの「Bussia」に加えて、「Vigna Colonnello(ヴィーニャ・コロンネッロ)」という畑名が表示されています。
つまり、「Bussia」は地理的に区分されたMGAを示し、「Vigna Colonnello」はその中の特定のブドウ畑を示しています。
なお、「Riserva(リゼルヴァ)」は熟成に関する表示であり、MGAやVignaとは別のものです。
このように、同じバローロDOCGでも、MGAとVignaの表示を読み分けることで、ブドウの由来をより詳しく知ることができます。
バローロのMGA制度や各コムーネの地理的な区分については、以下の記事で詳しく解説しています。
トスカーナのVigna(ヴィーニャ)とUGA
トスカーナ州でも、特定の畑を示す「Vigna(ヴィーニャ)」の表示が使われています。
また、キャンティ・クラッシコDOCGでは、2023年から「UGA(Unità Geografiche Aggiuntive)」と呼ばれる地理的区分の表示が正式に認められました。生産地域を11の区域に分けたもので、現在は「Gran Selezione(グラン・セレツィオーネ)」に適用されています。
UGAがブドウの産地を示す地理的区分であるのに対し、Vignaは個別の畑を示す名称です。
その違いがわかる例として、リエチーネ(Riecine)の「Chianti Classico Gran Selezione Vigna Gittori 2021」を見てみましょう。
ラベルに記された「Vigna Gittori(ヴィーニャ・ジットーリ)」は、ワインに使用されるブドウを栽培する特定の畑の名前です。
一方、「Gaiole(ガイオーレ)」はUGAの名称で、このワインのブドウがどの地理的区域に由来するかを示しています。
つまり、Gaioleは産地の区域、Vigna Gittoriはその区域内にある個別の畑を表しています。
このように、UGAとVignaは異なる役割を持ち、ひとつのワインのラベルに両方が表示されることもあります。
Vigna(ヴィーニャ)の表示からわかること
イタリアワインのラベルに記された「Vigna」は、単に畑の名前を紹介するための言葉ではありません。特定のブドウ畑の名称を、法律や生産規定で定められた条件に基づいて表示するものです。
バローロのMGAやキャンティ・クラッシコのUGAが地理的な区域を示すのに対し、Vignaは個別のブドウ畑を示します。MGAやUGAが「どの地域か」を示すのに対し、Vignaは「どの畑か」を示す表示です。
Vignaの表示は、生産者が特定の畑の個性や特徴を重視し、その畑に由来するワインの価値を伝えるためにも使われています。
そのため、Vignaを冠したワインには、生産者の上位銘柄や高価格帯のワインも多く見られます。Vignaは品質等級そのものではありませんが、畑の由来を明確にするとともに、ワインの個性や付加価値を伝える重要な表示となっています。
